小さい理由と、大きな未来

旅行の疲れと、昨日寝る前に軽くキャスを始めたら思ったより続いてしまって、午後までぶっ倒れてしまっていた。起きたらTSUTAYAのクーポンが届いていて、ほとんど衝動的にTSUTAYAに行ってCDとDVDを借りた。なんだ案外動けるじゃんって感じで、昼ぐらいはまだ大丈夫だったんだけれど、時間差で来たのか、夜は動けないくらいにぐったりしてしまって、日焼けしている腕を見つめながら横になっていた。ぐったりしながら、Twitterのタイムラインでめちゃくちゃ話題になっていた、漫画家の藤本タツキが無料公開したルックバックを読んだ。この1日、本当に感想や考察が尋常じゃないくらい巷に溢れかえっていて「下手に何か言えない」って空気になっていて凄かったというか、それであまり掘り下げたことは言わなかったんだけれど、感じ入るところはあって、読み終わったあとの余韻はなかなかのものだった。京アニ事件などの言及があるけど、それは話を残すためのフックであって、主題としては「創作する人間」としての強いメッセージなのかなと個人的には感じた。主人公の藤野が描くことに迷いを感じた先で出会った救いと、それでも描き続ける強い意志。その過程で「背中を見ろ」というキーワードが出てくるんだけど、これは「読者」に向けた意味と「自分以外の創作者」に向けた意味があって、読者には「何があっても俺は描き続けるから、その背中を」自分以外の創作者に向けては「お前がどう思おうとお前を見てくれる人がいるのだから、自分の背中を」と言いたかったのではないかと。自分は何か作品を創っているわけでもないし、安い考察でしかないかもしれないけれど、京アニに言及したのも「何があっても、例え自分の思う形以外で伝わったとしても描く」というように、主題を強める意味にも見えてくる。あと全体を通して「背中の構図」を描き続けているのも特徴的なんだけれど、これも作者の「自分も描くし、あんたも描け」との強い気持ちを感じて凄かった。考察抜きにしても、話の構成や展開が上手くて、実際にこのへんは読んで欲しい(まだ無料公開されていれば)から書き過ぎるとあれなんだけど、シンプルに泣いてしまった。映像でやったらスッと入ってくる話だけど、それを漫画じゃないと描けない表現で描いているところにすごく力を感じたし、おそらくこれは術中に嵌っているのかもだけど、この人の漫画を読みたいって気持ちに強くさせられた。これを無料で世界に叩きつけた、ってのも含めてとんでもないことだし、実際に反響を呼んでいるのも凄い。旅で疲れた足腰から脳天まで、とてつもない強度の作品が突き抜けて行った夜だった。