未だ影すら

身内で映画を勧め合って、観て感想を語り合おうみたいなLINEグループを作る話が始まって、それきっかけで映画への熱が高まりつつある。そんな折、デレの知り合いのJ@Qさんがスパイダーマンを誰か一緒に観ませんかという呟きをしていたので「これは」と思い、乗っからせて頂いた。昔から特撮ヒーローものも、アメコミ系の作品も全く通らないで生きてきたので、人から勧められたり、こういうタイミングでもないと観ないなと思ったので、かなり丁度良かった。

スパイダーマン (吹替版)

スパイダーマン (吹替版)

  • 発売日: 2019/04/17
  • メディア: Prime Video
 

 
スパイダーマンはアメコミ原作の映画で、放射能を浴びた特殊なクモに噛まれたことで超人的能力を手に入れた青年ピーターを主人公にした作品。力を使った結果、周りの大切な人を失いながらも、それでも正義の道を歩いていくピーターの闘いと苦悩を描いていく、かなり重い展開の話で、今まで粗筋もそんなに知らなかったから、もっとこうシンプルな勧善懲悪の話だと思っていたので驚いてしまった。倒すべき敵は敵としているものの、絶対的な悪というわけではなく、何というか小さい不幸が積み重なってどんどん悪い方向に行く感じというか、感情のぶつけどころが最後まで明確に無く、誰かが救われることなく終わる結末には、大いに感情を震わされることとなった。「大いなる力には、大いなる責任が伴う」という劇中のセリフが主題を1個表していて、いかにヒーローが孤独であるか、その力を使うことで救われるものもあるけれど、失うものも同時にあるという事実が、本当に重く響いてくる話だった。かなり続きが気になる終わり方でもあったので、近いうちに観なければと思わされてしまった。今回、Discordで複数人と映画を観るというのも初体験だったんだけれど、気楽にチャットでコメントしつつ観れてすごく楽しかったので、これはこれでまたやってみてもいいと思った。何より、ご一緒させて頂いて感謝というところです。


夜は米を切らしていたので、素麺と、それにプラスして出来合いの総菜を買ってきて食べた。こういう雑な食事はできればしないほうが絶対良いんだろうけど、めんどくさくてたまにやってしまう。深夜、また映画が観たくなって、前からどこかで観ようと思っていた「何者」を観てしまった。

何者 DVD 通常版

何者 DVD 通常版

  • 発売日: 2017/05/17
  • メディア: DVD
 

 
「何者」は朝井リョウ直木賞受賞作を原作とした映画。就活を行う大学生たちを主人公に、それぞれの人間関係、悩みや葛藤を描いていく作品で、就活と向き合っていくことで見えてくる「自分とは何者か」という命題が徐々に浮かび上がる、これがなかなかにハードな青春映画だった。面接のシーンで出てくる「自分を1分間で説明して下さい」というように、就活で必要になってくる自己アピールに対し「自分は何者で、どういう存在であるか」を説明することはいわば必須で、じゃあ自分は何者か、とすぐそれを言えるかというと、誰しも難しい。そんなテーマを、実際に就活に挑んでいく主人公たちがいかに向き合い、内定を手に入れるかを通して描ていくのだけれど、実際に自分が今転職活動をしているのもあって、いや、それがあるから観たのもあるんだけど、思いの外ぶっ刺さってきてヤバかった。SNS上のやり取りが終始出てきて、そこに現れる「作った自分」と、実際の自分との対比の痛々しさとかも胸に来たし、主人公の一人、拓人に共感を覚えつつあったその最後、彼がほんの少し「何者」の結論に近づく瞬間には、深く感動して泣いてしまった。自分は生まれてこの方、自分が「何者であるか」に答えを出せたことはないし、今まさにその命題の前で膝を折ってしまっている。自分の価値とは何か、自分が他の人間と違って持っているものとは何か。それを模索し続けている最中だからこそ、エンドロールを観ながら、強く思うところがあった。全体を通して苦みに満ちて、青春映画としても大いに重みがあって、爽快なハッピーエンドも無いけれど、深く余韻の残る映画としてすごく良かったので「何者」という、そのテーマに興味あれば観てみてもいいかと思います。「何者」の答えも、僕も見つけなければならない。お供として飲んだ檸檬堂に誓うのは、いさかか心許ないかもしれないけれど。