彼の境界線

かなり気が滅入る作業だったけれど、精神の手帳の申請する窓口に電話して申請についての相談をした。今の状態や、通院状態を話したところ、やはりブランクの期間や、実際に通って症状が良くなかったかどうかが重要になってくるみたいで、審査が通るか通らないかはともかく、今通っている病院の先生が診断書を出せると判断したら申請自体は出来るとのこと。急がないのであれば、一番確実なのは今の病院でしばらく通院してからということ。次第に希望が薄れていくような思いがあり、淡々と相槌を打ちつつも、急げるのであれば急いだほうがいいのは間違いなく、改めて病院の先生に相談してみることにした。胸中に、どうしてちゃんと通院を続けなかったんだという気持ちだけがあった。相性とか言わずに、すぐに折れたりせずに、ちゃんと通っていたら良かった。病院に通い続けるのにも、才能がいるのかもしれない。自分にはそれすらも無かった。通話を終えたら、体力も気持ちも持ってかれて、寝てしまった。起きたら、外がもう目を覆いたくなるほどの土砂降りで、買い物にも行けなくなってしまった。本当にその日その日の食糧しか買わないので、冷蔵庫には何も無い。仕方なく、レトルトの牛丼と、卵焼きを食べた。1日お金を使わなかったことだけが、今日の収穫だった。たぶん、絶対こんな気持ちのときに見る映画じゃないんだろうけれど、寝る前にヒメアノ~ルを観た。


古谷実の漫画原作の映画。何も無い日々に不安を覚えながらアルバイト生活を続ける青年岡田が、会社の先輩が恋したカフェの店員ユカと、彼女をストーキングする岡田の高校の同級生森田と出会うことから生活が激変していく様を描いた映画で、岡田や先輩の安藤、ユカとの何でもない日常と、裏で起きている凄惨な事件とがやがて交差していくのが実にスリリングで、何度も息を呑みながら観てしまった。構成として「日常」と「事件」をはっきり分けている(前半と後半のように)のが特徴的で、前半をフリのようにして後半、映画の残虐性が加速して行くのが面白く、現実の中からホラーが現れてくるような、地続きの恐怖としてそれが感じてくるのが凄かった。公開当時から評判だったけれど、森田役の森田剛の演技が鬼気迫るものがあって、いや、鬼気迫るってステレオタイプな表現じゃ生易しいくらいの力があった。「ただヤバい奴」じゃなくて「日常から踏み外してしまった(どこかで壊れてしまった)」ヤバさを完璧に演じていて、生々しさというか、非日常じゃなく現実の人間としての怖さがあった。原作では無いらしいんですが、映画では森田がそうなってしまった背景の描写もあって、それを受けてのラストのあるシーンの演技には、本当にゾクッとしてしまった。岡田役の濱田岳の平凡な人間感が、よりそれを際立させていたのも良かった。原作とあえて変えたという最後の結末には、一抹の救いも感じられて、そこも映画として良かったし、とにかく後半ん入ってからの疾走感は見物で、かなりグロい描写があるので全員には勧められないけれど、森田剛のあのヤバさだけでも観て欲しい。そんな凄い映画でした。