戻れない感情の、その先を

ダウ90000のコント公演「10000」を観てきた。ダウを生で観ること自体初めてだったんだけれど、今回は割と特殊というか、過去の公演だと演劇寄りなものが多い中、かなりお笑い寄りなコントのみ70分というライブで、1日3公演ってのも含めて、相当ストイックな公演になっていた。小道具はほとんど椅子のみ(最後の「道具」というコントは文字通り小道具が出てきたけど)8人の男女の会話劇で笑いを紡いでいく様は、めちゃくちゃカッコ良くて、その上でめちゃくちゃ面白かった。特に好きだったのは(タイトルは合ってるか分かりませんが)大学の同級生の下らないやり取りが秀逸なオチに着地する「浪人生」メタ的な視点から男女の会話を描いた「独白」かなり大喜利的なボケの作り方が印象的だった「道具」一番好きだったのは、男女の恋愛という永遠のテーマとも言うべき題材を、ここまで突き詰めるか?ってくらいに煮詰めた「今更」で、これは所謂ボケ然としたボケは出てこないんだけれど、ダウの真骨頂と言ってもいい、男女のあるあるや、その中に存在する嫌らしさ、表には出さない感情などが徐々に露わになっていくのが見てて面白くて、でも切なくて、感情をぐちゃぐちゃにかき乱されるのが凄かった。一つ一つのセリフのこだわり方も見てて伝わって来たし、ダウのコントがただの平坦な会話劇で終わらないのは、このあたりの強さなんだろうと思う。8人もいて、一人も異常な人物を登場させないで、コントとしてここまで笑いを取ってるのも改めて凄い。70分とはおよそ思えない濃度の物凄い公演で、観に来て良かったと心から感じた。今後チケット取れるかどうかも危ういくらい、ダウはもっと売れて行くだろうと思うけれど、舞台上で観てこその熱量もあるだろうし、また是非とも足を運んでみたい。