まず一夜

大喜利の無い休日、夕方から明日行われるR-1の敗者復活がYoutubeで配信されたので観た。会場の感じを割とそのまま映していくのが臨場感あって良かったし、準決まで残っているのだから当たり前かもしれないけれど、誰一人スベってなくてレベル高くてめちゃくちゃ面白かった。トップバッターで結構設定が手の込んだ一人コントをやってた徳原旅行、ギャグ1本で勝負しきったYes!アキト、ピンネタは初めて見たケビンス仁木、設定から終わらせ方まで凄過ぎたビスケットブラザーズの原田、全然見たこと無い芸をやってたまりんか、いつもの悪意を見せる芸風を悪意そのままに捻って来たヒコロヒーあたりが特に印象に残った。コンビのときの女装のイメージしかなかったレインボー池田も器用な芸をやってたのも凄かったし、NSC在籍で勝ち残った準新作も面白かった。投票は迷ったけど、一番笑ったビスブラ原田に投票。全体的に面子も新しく、既に決勝のメンバーがアツい上に、どこが上がっても更に面白くなりそうな予感がした。敗復を観終えたあと、昨日書いた秋葉原サイファーに参加するために秋葉原に向かった。朝起きてやっぱり行けるときに行っとかないとと思ったのと、実はちょっと声をかけていた秋葉原サイファー経験者のとさわさんから「最初だけですが顔を出せそう」と連絡を受けたので、一緒に行く形でならと参加を決めたのだった。とはいえ、全く知らない人だらけのところで自信があるわけでもないラップをするという行為、自分にとってはもうヤバ過ぎる状況で、のとさわさんと雑談しながらもずっと緊張していた、というか、何か話していないと落ち着けなかった。サイファーの場所に着いて主催のAOHAさんに挨拶し、本当になんとなく3人でサイファーが始まり、のとさわさんに付いていく形で何とかラップをしていたら、本当にちょっとずつ参加者が集まってきて、気づいたら輪が出来てこれがサイファーなんだって思えて面白かった。のとさわさんが抜けたあとも、心許なくともラップを続けていくしかって感じだったんだけれど、幸いDiscordのサイファーで一緒になったことがあって、会うのは初めだったけれど知ってる人が2人くらいいたのでギリギリ、本当にギリギリだけれど精神を保つことが出来た。ラップ自体は、やっぱり対面すると周りの表情が見えるのもあり「ダサいと思われるのが怖い」という気持ちが沸き起こり、何とか言葉を繋がりながらも、果たしてこれで今合っているのか?どう思われているんだ?邪魔なんじゃないか?と頭の中は不安な気持ちがぐるぐる回って気が気ではなかった。あと、ビートの上なら何とかなるけれど、それ以外の部分で話しかけたりといったコミュニケーションは全く取れなかった。本当に純粋にコミュ力に欠けていて悲しい。久々の開催だからか、気づいたら20人くらい集まってて、自分みたく初参加の人もいたっぽいけれど、ほとんどが常連らしき人らしく、歴史を感じたりした。途中ゆるい感じだけれどバトルをやる流れになって、苦手意識はあったけれど、この空気だし初見の人にそんな逆に言う事もないだろうと思いつつ参加を決めて、でも逆に僕も言う事なんもないなと思ったら、本当の本当に幸運なことに、Discordで絡みがあった内の一人である配達員さんと当たって、それでも言うことなくて一瞬で負けたけど、ダメージ無くてホッとしたし、初戦だったということもあり、周りがまだバトルに集中しきれない感じで印象に残らなかったのもさらに幸いした。負けたあとは普通に観客になって、実際そんな激しいディスり合いとかも起きなかったので、気楽に見守れて良かった。バトル後はまた散り散りになり、雑談したりサイファーしたりと各自が分かれていく中、前述の通り誰かに話しかけることができないから、何とか空いた隙間を見つけてサイファーに入って、まだバクバク緊張しながらバースを蹴った。Haoさんていう、最近MCバトルのビートに曲が使われることで曲がバズった人が同じ輪にいて、その曲をマジでヘビロテしていたから、オタクの感情でドキドキしたりしていた(恥ずかしくて直接伝えることはできなかった)そしてサイファーは解散になり、結局特に馴染むことはできなかったな…と思いつつ、夜の秋葉原を駅までサイファーの参加者の人たちと歩いて帰った。帰りの山手線で、老人が酔い潰れて倒れていて、どんな一日の終わりなんだと思ったりもした。家路につきながら、今日のサイファーについて思いを巡らした。初参加で緊張でいっぱいいっぱいだったとはいえ、何かもっと出来ることはあったのではないかという気持ちが心に残っていた。松屋の牛丼を食べながら、何となく飲みたい気分になって買ったお酒を飲みながら、それが徐々に悔しさに変わるのを感じた。パッと輪に入り、パッとカッコいいラップを出来るようになりたい。今日僕がそこに「居た」と思えるような、思って貰えるような、そんなラップが出来るようになりたい。ダサいかもしれないけれど、ラップを続けている理由には「カッコよくなりたい」というのがある。35のおっさんが何をと思われるかもしれない。知り合った人の曲を聴く機会も増えて、いつしか「カッコいい曲を書きたい」という気持ちも芽生えつつある。2杯目のお酒を飲みながら、気づいたら衝動的にリリックを書いていた。前から書こうかなと思っていた、爪とぎサイファーを半年続けてきたことに関する曲だ。書き出してみたら、書くことなら結構あるから、あとは韻の踏み方とか技術的なところで、そこはサイファーで積み上げてきたものもあり、自分もびっくりするくらい早く、それは書き上がった。深夜のテンションとお酒の加速で書き上げた歌詞に価値があるのは分からない、これを果たして作品に出来るかは分からない。ただ、サイファー後の悔しさは少し、微かな満足感に置き換わっていた。また明日見直そう、明日恥ずかしくなったらゴミ箱に入れよう。勢いでラブレターでも書いたような、そんな気持ちで眠りに就いた。