日向に手をかざしたら

EOT第7章に出場してきた。普段は個人戦の大会なんだけれど、今回はタッグ戦で、僕は東堂さんと組みました。タッグ名は「洗濯かごはふたつ」事前に2人で好きな単語などを出し合った結果出てきた「洗濯かご」という言葉をタッグっぽくしたのが由来。事前に集まってやよい軒でご飯を食べながら、本当に簡単な打ち合わせ(お題のヒントが出てからタッグのどちらが出るか選ぶ形式だったので、得意なお題苦手なお題の確認など)だけをやってから会場入り。2回目で見ても、やはり座・高円寺2は大きかった。ほとんどが出演者とはいえ、キャパ300ほどの会場を大喜利の人が埋めている光景はなかなか見れるものではない。予選は前半後半で3ブロックずつで、自分たちは後半の最初に決まった。最初のほうは嫌だったのでホッとしつつ、前半の試合を、自分たちならどう選ぶかみたいな話を軽くしながら見守った。最初こそ少し空気が重かったものの、徐々に温まるにつれ会場のボルテージも上がり、前半最後に出たトリッキーなお題(可愛いことを言うお題)の際には、爆風みたいな盛り上がりで終わって凄かった。ガチガチに勝つ気持ちがなかった、っていうと東堂さんに失礼な表現になってしまうかもしれないんだけれど、元々自分の生大喜利の調子が上向きじゃないというのがまずあり、単純に自分が大喜利好きで、かつ感性が近いところの人と組めば気負わなくてもいいのではないかという気持ちがあり組んだので、強い緊張こそ感じなかったものの、タッグ戦である以上、責任も伴う為、足を引っ張らないかどうかは心配だった。出番は後半の最初のブロックで、1問目は僕が出てややウケしたあと、2問目3問目はお題のヒント的に自分がピンと来なかったのもあり東堂さんに出てもらったら、これがめちゃくちゃハマって、気持ちいいくらいウケてくれたので、後ろで小躍りしてしまった。4問目は再び自分が出たものの、再びのややウケ。5問目はどちらが出ても良かったのだけれど、調子を考えて東堂さんを送り出した。先ほどと同じとまではいかないまでも、普通にウケて終わって、それで予選は終了した。前半後半それぞれの上位が本選進出というルールの為、自分たちの点数は何となく把握しつつも他次第で変わるので、そのあとは前半とは違う緊張で他の試合を見ることになった。結果、おそらくボーダーなのではないか?と体感的に思い、これでもし落ちていたら、責任はウケなかった自分のせいでしかなく、その時点で東堂さんには軽く謝ったりもした。集計の間には、久々に会えた人も結構いたので、落ち込みを紛らわせるように進んで話し込んだ。そして、結果発表が始まり、後半ブロック6位までは通過のところ、洗濯かごはふたつは4位で本選進出と発表された。瞬間、普通に信じられなくて頭が真っ白になった。僥倖というか、僕にとっては僥倖、東堂さんにとっては実力の結果である。何にせよ、勝ち残ったことだけは確かで、その後動画に使うための写真撮影をしたり、勝ち進んだ人と話しつつ、内心、このまま終わるわけにはいかない、という気持ちが猛烈に湧き上がるのを感じた。本来、僕が東堂さんを連れて行かなければならない立場なのだから、この先は自分が東堂さんを上げていかなければならない。気負い過ぎても空回る可能性もあったけれど、冷静にじゃあ行きましょう、なんて思わるわけも無かった。本選の1戦目の相手は縁川ニセ松(縁川縁松・ニセ関根潤三タッグ)という、言ったら曲者のタッグで、とにかく相手のペースとかは考えず、自分の大喜利だけを全うすることだけを考えた。自分の1答目が大きくウケたので、それでかなり落ち着くことが出来た。向こうも打ち返した結果、試合は延長。延長は1分の短期決戦なので、より一層気合いとギアを入れたら、自分が考えやすいお題に当たったのもあり、あとで考えたらよく短い時間でそこまで行けたなって距離感の答えを幾つか出せて、気づいたら勝っていたって感覚だった。東堂さんもウケていたのは感じていたので、波に乗っている感じもあった。2戦目は太陽(FAN・ゴウ体タッグ)で、これまた2人の色が対照的でやりにくい相手ではあったけれど、東堂さんが1答目でめちゃくちゃに凄い回答を出して爆ウケして、僕も横で笑ってしまった。これが出るなら大丈夫なのではないか?と思ったものの、対して自分はそこまでデカいのを出せないままでいたら、ゴウ体さんが大きい笑いを何発が出していて、いつの間にか劣勢になっているのを感じた。難しかったのが、自分が出したい方向性の最高峰みたいなものを、東堂さんが最初に出してしまったみたいな感じがあって、そこと別のベクトルで糸口を見つけられないまま終わってしまったのが口惜しかった。半分諦めた感情で投票を待ったら、案の定、軍配は太陽に上がった(思えば太陽と洗濯が闘っていたのは少し面白い)もうちょっとできたのではないかという悔しさは確かにあったし、東堂さんも「もっと出したかった」と悔しがっていたけれど、自分の中では、久々に自分が「出したい」と思える回答を出してそれが受け入れられた事実のほうが少し大きく、最近ずっと感じていた生大喜利への諦めみたいな感情に対する、一抹の救いを感じることはできて良かった。強く集中すれば、自分のやりたい大喜利でウケて、もっと言えば勝つことができるかもしれない。抜きんでた正統派でもない、個性や華があるわけでもない、生大喜利の中に、自分の「席」を作り出せるかもしれないと思えた。だから、多分強く悔しさを感じなかったんだろうとは思うけれど、ただ今日かなり良い状態であったであろう東堂さんと、今日優勝できたかもしれない未来を逃したのは、惜しい事実ではあった。終わったあと「タッグとしてすごく良かった」と褒められたのは嬉しかったし、自分が組んだときに思っていた、こうなったらいいだろうな、という方向にここまで上手くいくことあるんだってくらい上手くいったのは凄いことだったと、終わった今でも思っている。その後、本選は強豪を次々と打倒したヤオクロ(ジャージの顔・キャベツタッグ)と、関西から来て強い存在感を放ちながら勝ち上がった染まるよ(吉永・永久保存タッグ)の決勝になり、優勝したのは全回答で爆ウケくらいの力を発揮したヤオクロだった。2人は生大喜利の同期で何回かタッグを組んできて、そしてまた「禁生」というニコニコの放送で一緒に大喜利をやっていた2人で、そこで一緒だったOGAKUZUZさんが昨日の哄演児杯で優勝したのもあり「追いつけて良かった」と涙ぐむジャージの顔さんのコメントに普通にちょっと泣いてしまった。特に本選以降は、自分たちもそうだし、タッグ戦ゆえの「想い×想い」が力を生んでいくのが目に見える程に感じられて、生大喜利という、人と人が対面したときに起こりうる「風」のようなものを久々に強く見れて、本当に凄い大会だったと思った。動画が上がったら、どこまでその臨場感が伝わるかは分からないけれど、予選から本選、熱量がとんでもない大会だったので、見てみて欲しい。大会後はまだ余韻を感じたい人たちで打ち上げに行った。警備員さんが自分の出来に落ち込み、聞いてられないくらいの弱音を吐きまくっていて凄かった。何故かスマホがバリバリに割れていて、それをいじられながらまだ愚痴を言っていたら、グラスを倒して東堂さんのスマホを濡らし「巻き添えにするな」と怒られてて笑った。良い大会の打ち上げは、得てして良い打ち上げになることが多い気がする。こんな楽しい夜が過ごせるなら、こんな最高な夜を使い果たせるならば、世界が狂っていても、人生が消えかけても、絶対に生きていたいと思う。3月の、この高円寺で起こったことを、僕はきっと忘れない。