なんでか合図なく飛び出して

昨日はお酒を飲んだ影響で薬を飲まずに寝たけれど、問題無く眠ることが出来たので良かった。日中、応募書類を書こうとしては自分が嫌で目を逸らす、見つめては目を逸らす、の繰り返しだった。書類のどこを見ても、自分の中のどこを見ても、外に堂々と、お天道様の下に白昼堂々と晒せるようなものが見当たらなくて、書類を見ている時間イコール落ち込む時間で何の地獄なんだと思った。ちゃんとした人間に生まれて、ちゃんと生きてこなかった罰なのかもしれなかった。このままだと、このまま自分のことを嫌いなまま死んでいくだけだから、何とか捻り出さないといけないのも事実だった。何度も寝たり起きたりしながら、結局出てくるのは当たり障りのない、自分かどうかも分からない言葉だけだった。自分のことを自分の言葉で表せないのは一体どういう病気なのか。健康よりお金のことを考えて、夜はつけ麺と野菜炒めのやつを食べた。やはりこれが機能美として一番良い気がする。食べ過ぎて最終的には宇宙食くらい味気の無いものとして胃に収まっているのかもしれない。寝る前にまた映画を一本観た。


都会の隅で暮らす一つの家族、祖母の年金と僅かな収入、その他を万引きによってまかなっているその人々が抱える秘密と互いの絆を描いた映画。あるとき父親の治と祥太が一人の少女を拾って家に帰ってきたことから、家族の関係がゆっくりと動いていく様が重く、切なく描かれていて、観終わったあとの余韻が物凄かった。貧困や子供への虐待など、重い社会問題を背景に、最初から最後まで淡いシーンの連続が続いていくのが印象的で、楽しげなシーンこそ哀しく目に映るのが凄かった。ネタバレじゃない程度に言うと、主人公家族は世間からすると「正しい家族」ではないんだけれど、その家族の目線を通して「血の繋がり」が問いかけられる構図になっているのが良くて、劇中の家族を外から見る人の位置(この家族に懐疑的な目を向ける位置)に自分もいるんだろうかと考えたら、何が正しくて何が間違っているのか、家族の繋がりとは何を以て判断するべきものなのか、分からなくなるような感覚になり、一気に切なさが増した。印象的だったのは、家で花火を観る一幕。音だけが聞こえる花火を家族が楽しむそのシーンが、ものすごく切なく、心に刻まれた。多分だけれど、結末を見た上で観返して見ると、そのときどきの人々の感情の機微を改めて感じられて、深みが増すような感じがある。カンヌ映画祭で賞を獲ったのも頷ける、深く記憶に残る一作だと思った。母親役の安藤サクラが本当に凄い演技をしていて、前から安藤サクラは好きだったけれど、より好きになった。重い話なので気軽に勧められる感じの映画では無いけれど、それでも勧めてみたくなるような映画ではあります。よければ是非。